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「西九条村に屯所」記事(2020/6/8)について

2020年6月23日

当ブログで報告した「新選組『不動堂村』屯所の規模と位置の確定」が地元京都新聞で記事化されました。なんと一面トップ、三面に補足記事という扱いでした。
かなりの分量を割いていただいていますが、伝わらない部分もあろうかとおもうので、少し補足させていただきます。
新聞に掲載された位置図ですが、だいたいいいのですが、幕末当時は北側の道(現:塩小路通)は当時の堀川(川のです、通りではなく)以東には存在しませんので、実際の屯所の範囲は現リーガロイヤルホテル敷地の北端部は入りません。
また、中村武生氏の三面でのコメント

「『かなり可能性は高いが、問題点は残る』 と話す。江戸時代の町役人が残した記録を基にした同ホテル西側の下京区志水町・上夷町や、同区塩小路通西洞院付近と推定した自説を撤回しつつ、『同じ地名が近くにないとも限らない。関連する絵図も見つかっていない』とさらなる検証を求めている」

ですが、地名だけでなく規模もわかっているので、ここ以外にはありません。また、ダメ押しになりますが、地元の元安寧小学校の資料室に保管されている明治10年ごろに地元が官の命で作成した地籍図に「字松明田」と明記してあるので、他に同じ地名がある可能性はありません。また、「御花畑」屋敷のように敷地図と絵図が相次いで公になるという僥倖はそうあるものではなく、位置と敷地規模についてはこれで確定だと思います。絵図がみつかってさらに内容が明らかになればいいと思いますが、それは将来の課題です。

町役人が残した記録というのは、実際は西九条村庄屋たちが新選組用に年貢地を西本願寺に売り払う許可を年貢納入先の領主である五十嵐氏にお伺いをたてた文書です。そこに示された志水町などは現タキイ種苗の敷地です。ここについては、國學院大學の吉岡孝氏の『明治維新に不都合な「新選組」の真実』(ベスト新書 2019年)を参考に洋式軍隊化のための調練場予定地とする予定と考えました。このコメントものせていただきました。

「なお、新出氏は、中村氏が候補地とし たホテル西側について、新出氏は『屯所拡張予定地』との見方を示す。屯所移転のころ、幕府 や各藩は京郊外の屋敷などに調練場を設け、軍隊の西洋化を加速させていた。剣客集団のイメージが色濃い新選組も、銃の実射訓練に力を入れるようになった。 新出氏は『会津藩預かりの浪士集団から 幕府直参への格上げに伴い、ホテル敷地 に大名家並みの格式を持つ屋敷を構えた。加えて、隣接地に一定の広さが求められる洋式調練場を確保しようとしたのではないか』とみている。」

なお、吉岡氏の一般書の内容は直近で論文化されました。「幕末新選組における洋式調練の意義」(『國學院雑誌』 2020/04 121巻-第4号)です。

今後のこの屯所の呼び方です。藤井氏は「西九条村屯所」と案をしめされています。西九条村領内にあり、西本願寺が屯所と呼んでいるからで有力だと思いますが、京都に住んでいるものとしては、八条通より北に存在するものを「西九条」と冠するのは抵抗があったりします。だからといっていい案があるわけではないのですが。ブログでは苦しまぎれでカギ括弧つきで「不動堂村」としています。なかなか難しいものです。
今回は明治初めの上京区の地籍図が役に立ちました。文献的なアプローチではなく、考古学的な、あるいは歴史地理学的なアプローチが成功しました。気軽にコンピュータでGISが扱える現在、どんどんとこのような研究が進むだろうと思います。私は勝手に「デスクトップ考古学」「デスクトップ歴史学」と名付けています。研究の裾野の広がりを期待したいですね。
全貌はこのブログの該当ページを見て下さい。藤井氏が翻刻された西本願寺文書も引用してあります。
結局、リーガロイヤルホテル前に立てられた碑文が史蹟地石碑として相応しいものになりました。ただし、建立時点で誰もが認める確たる証拠がなかったというのはあるとは思います。しかし、だからといって対抗するかのように、これまた確たる根拠がないのに別に石碑をたてるものではありません。歴史研究者はもっと慎重でなければなりません。中村氏がかつて新選組洛中屋敷跡石碑として塩小路西洞院南西角のホテルにはたらきかけて建てられた石碑は、ご自身が自説を撤回された今、そして確かな場所が明らかになった今、平安京の住所を示す以外意味のないものになりました。他山の石としてかみしめたいと思います。
今回の確定は、私のようなものが突然送りつけた私案に反応していただいた藤井元館長の再調査がなければ叶わないものでした。広く共同作業で歴史解明が進む。ネット時代の新しい研究のあり方を感じました。昔だったら東京と京都との物理的な距離の差はおいそれとはいかなかったと思います。
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